🪙 おかねと暮らし

1円スマホの落とし穴5つ、高齢の家族と確認したいこと

2026.08.17

窓辺の木のテーブルに置かれた、閉じたノートパソコンと老眼鏡、めくられた白い書類の束

義父母(夫の両親)は、もともとドコモのahamoで安く済ませていました。それが、家電量販店で「最新のiPhoneが1円で買えた」と、うれしそうに帰ってきたことがあります。

正直、ちょっと身構えました。

聞けば買ったのはiPhone14。当時の最新はiPhone16だったので、じつは最新機種ではありません。そして気づけば、契約はドコモからauに変わっていました。しかも最初の数か月は、ひとりあたり月7,000円ほどのプランに入るのが条件だったそうです。「半年後にUQに乗り換えれば、もっと安くなりますよ」とも言われたとのこと。

そのとき、なんとなく嫌な予感はしたんです。でも、詳しく聞かないまま時間が過ぎました。契約はもう済んでいますし、喜んで帰ってきた人に水を差すのもためらわれます。ただ、あとから中身を見ていくと、「1円」の後ろにはいくつも条件がついていました。同じことは、どの家でも起こりうると思います。そこで「1円スマホ」のしくみを、自分の言葉で説明できるところまで公式情報で調べ直してみました。

「1円スマホ」には2種類ある

同じ「1円」という言葉でも、中身がまったく違う2つの売り方が混ざって使われています。義父母が案内されたのは、このうちのどちらだったのか。まずはそこを見分けるところから始めました。

一括1円と実質1円のちがいを示す2枚のカード。一括1円は返却の義務なしでその場で1円を支払い端末は買い切り。実質1円は返却が前提で、24回の分割で購入し2年後に返すのが条件。返さないと残りを支払う

ひとつは「一括1円」。その場で1円を支払えば端末が自分のものになる、シンプルな買い切りです。返却の義務はありません。

もうひとつが「実質1円」で、こちらは24回の分割払いを組んだうえで、2年後に端末を返却することが前提になっています。月々の負担を計算すると「実質1円くらい」に見える、という売り方です。「実質」という言葉の中に、すでに「返す」という条件が織り込まれています。義父母が入っていたのは、あとで確認するとこちらの「実質1円」のほうでした。

なぜ1円まで下げられるのか

10万円前後する端末を、なぜそこまで安く見せられるのか。じつは、国のルール変更が関わっています。

端末の値引き上限が2023年12月27日を境に、2万円から原則4万円に緩和されたことを示す図

総務省は2023年12月27日、携帯電話の端末値引きの上限を、それまでの2万円から原則4万円に緩和しました(4万円以下の端末は上限2万円、4万〜8万円の端末は本体価格の半額まで、という段階つきです)。2024年12月26日には、ミリ波対応スマホに限って上限を5万5,000円まで再緩和する改正も施行されています。もともとは、行きすぎた値引き競争を是正するための規制でした。

ただ、この値引き上限だけでは、10万円前後する高機能なiPhoneなどを1円まで下げるにはまだ足りません。そこで各社は、値引きに加えて「長期の分割払い+返却で残額免除」という返却型プログラムを組み合わせることで、実質的な月額負担を1円近くまで見せています。

で、もうひとつ、義父母のケースで腑に落ちたことがあります。au公式のキャンペーンページを確認すると、大きな割引を受けるには他社からの乗り換え(MNP)が条件になっていて、新規契約より乗り換えのほうが割引額が大きい、という案内がありました。義父母が「気づけばドコモからauに変わっていた」のも、この乗り換え条件と無関係ではなさそうです。

どの機種がどのプランで1円になるかという正式な対象リストは、公式サイトでも見つけられませんでした。まとめサイトの情報にはau本体とUQ mobileのプラン名が混同されているものもあったので、対象プラン名や金額は書かずにおきます。

auの「スマホトクするプログラム+」、24回のうちどこで返すか

返却型プログラムはドコモとauでそれぞれ別の名前がついています。ドコモは「いつでもカエドキプログラム」、auは「スマホトクするプログラム」で、これは別々の制度です。ここではauの制度を例に、公式サイトで確認できた条件を見ていきます。

24回払いのうち、購入から13〜25か月目の間に返却すれば残価が免除されること、返さなければ再分割か一括になることを示す時系列の図

auは2026年2月26日から、新しい「スマホトクするプログラム+」に切り替わりました(旧「スマホトクするプログラム」は2月25日で新規受付を終了しています)。しくみの骨格は新旧共通で、24回払いの残価設定型です。本体価格から2年後の残価(最終回分)を差し引いた分を23回で払い、購入から13か月目〜25か月目の間に端末を返却すれば、24回目にあたる残価の支払いが免除されます。

返却しなかった場合は、申し出がなければ審査のうえ、残価が改めて24回に再分割されるか、一括払いに変更することになります。義父母のケースでいうと、返却しなければ2台で約19万円。返せば0円です。この差を見たときは、さすがに背筋が伸びました。

項目 内容
分割回数 24回払い(残価設定型)
残価免除の返却期限 購入後13か月目〜25か月目
返却時にかかる費用(特典利用料) 最大22,000円(機種・時期により異なる)
返却しない場合 審査のうえ残価を24回に再分割、または一括払いへ変更可

出典:スマホトクするプログラム+(au公式サイト)、KDDIニュースルーム(いずれも2026年8月確認)

新プログラム「+」からは、返却して残価免除を受けるときに「特典利用料」が新設されている点も見落とせません。金額は機種や時期によって変わり、最大22,000円かかります。「返せば無条件でタダ」ではなく、返しても数千円〜2万円ほどの負担が別にかかる場合がある、という理解が近いです。なお義父母が入っていたのが特典利用料ありの新プログラムか、なしの旧プログラムかまでは、今回の調べでは特定できませんでした。

傷があったときの費用、そして返す・返さないの分かれ道

返却するときにもうひとつ気をつけたいのが、端末の状態です。

期限内に返したときと返さなかったときの分かれ道。返したときは残価免除だが特典利用料が最大22,000円、返さなかったときは残価を再分割か一括で払い端末は自分のものになる、という図

画面割れ、液晶浮き、カメラ(レンズ)割れ、充電不可。こうした破損・故障の状態にあてはまると、「故障時利用料」がかかります。故障紛失サポートに加入していれば2,200円ですが、未加入だと最大22,000円です。返却前提で使っているつもりでも、傷のつき方しだいで想定外の出費になることがあります。

義父母の返却でも、実際にこの傷まわりでひやっとする場面がありました(その顛末は別記事にまとめています)。

高齢の家族が見落としやすい、5つの落とし穴

ここまでのしくみを踏まえて義父母のケースを振り返ると、「うちの場合、ここで落とし穴にはまりかけていたな」と思うところが5つありました。

1円スマホの5つの落とし穴。乗り換えを忘れて高いプランのまま払い続ける、オプションの解約を忘れて使っていない料金を払い続ける、返却時の傷や破損で故障時利用料を請求される、窓口でわからないまま別のプランに入る、返却しないまま2年後に残った代金の支払いが始まる。義父母の場合は返却しなければ2台で約19万円だった

  1. 乗り換えを忘れる。「半年後にUQへ」のような案内は、その場では覚えていても、日々の生活の中で忘れがちです。忘れたまま高いプランを払い続けることになります。
  2. オプションの解約を忘れる。契約時に付いてくるオプションを、そのまま使わずに払い続けてしまうことがあります。
  3. 返却時の傷や破損。画面割れやカメラレンズの割れなどにあてはまると、故障時利用料を請求されることがあります。
  4. 窓口ですすめられる。返却の手続きに行っただけのつもりが、わからないまま別のプランに加入することになる場合もあります。
  5. 返却しないまま。期限を過ぎてしまうと、2年後から残った代金の支払いが始まります。義父母のケースでは、2台で約19万円でした。

高齢の家族は、こうしたことをうっかり忘れてしまって、結果的に高く払ってしまっている可能性がある。うちだけの話ではない気がしています。これが、この記事でいちばん伝えたいことです。

なお、義父母が案内された「半年後にUQへ乗り換えれば安くなる」という話も、実行するときには条件が変わっている可能性があります。au・UQ mobileは同じKDDIグループの2ブランドで、両者間の移動は他社への乗り換え(MNP)とは別の「番号移行」という手続きになります。この番号移行の事務手数料が、2026年8月1日から有料化されました(店頭で端末購入を伴わない場合、無料から4,950円に変更)。「あとで乗り換えれば安くなる」という約束は、実行するタイミングを逃すと、話がそのまま流れてしまうことがあります。

落とし穴の裏づけについて

正直なところ、上の5つは義父母のケースをもとにわたしが感じたことで、「1円スマホ」や「返却型プログラム」そのものを名指しした公的な注意喚起があるわけではありません。ここは、ごまかさずに書いておきます。

そのうえで、携帯電話の契約全般について、公的機関が実際に注意を呼びかけていることは確認できました。

繰り返しになりますが、これらはいずれも携帯電話の契約全般についての注意喚起で、「1円スマホ」や返却型プログラムに特化して名指ししたものではありません。それでも、高齢の契約者のトラブル相談が増えていること自体は、公的機関の資料で確認できる事実です。

「1円で買えた」と聞いたら、一緒に確認したいこと

条件は今後も変わる可能性があります。契約する時点で、必ずそのときの公式サイトを確認してください。ここだけは省略しないでほしいところです。

そのうえで、家族が「1円で買えた」と喜んで帰ってきたときは、それだけで安心せずに、一緒に契約書や明細を確認しておくと、あとの落とし穴を減らせると思います。返却の期限や、次に何をすればいいかは、カレンダーやメモに書いておいて、家族の誰かがわかる状態にしておくのがいちばん確実な気がしています。

義理の両親のスマホをこのしくみで乗り換えたときの、実際にあったやりとりはこちらに書きました。

1円スマホの返却、19万円の請求を0円にした手順

子どものスマホ代を見直したときの話はこちらです。

高校生のスマホ代を格安SIMで年6万円節約、料金比較の目安

← おかねと暮らしの記事一覧へ